童貞の妄想体験談というのは、聞いていて耳が痛い。

小学校のときの友だちから、「H(女子)が結婚するので6年ときのクラスのみんなで色紙を書いて贈ろう」みたいなメールがきた。僕は中学に入るときに今住んでるとこに引っ越ししてるので、あんまり小学校のときの友だちとは関わりがないし、ことHさんとは全くと言っていいほど関わりがないから、そのメールに対して無視を決め込んでいたのだけれど、その色紙計画の中心になって祝辞集めに暗躍しているKから電話がかかってきて、「今、近くまで来てんだけど、行ってもいい?」なんて言うものだから、さすがに断りきれずにOKを出した。
それで仕方なく(正直Hさんにまつわるエピソードなど、算数の時間に○○-□□=△△というのを、「まるまるマイナスしかくしかくイコールさんかくさんかく」と発言して思いっきり僕を閉口させたということしかなかったのだけれど、さすがにそれを書くわけにもいかず)適当に「結婚おめでとうございます。お幸せに。ヨシカワ」といったようなことを書いた。
まるで祝う気のない祝辞を書くのにダラダラとしていると、Kが武勇伝みたいなものや、どこぞのワゴンセールなエロゲーのシチュエーションだよと思わずにいられないような桃色体験談を口にしだして、僕はただただ笑うしかない状況に追い遣られた。
大学1回生んとき九州でガキにカツアゲされてその仕返しに仲間を集めてボコっただとか、Kは高校んときに水泳部に属していたらしく、そこに入ってきた初めての女子部員が謂れのないイジメを受けていて、それに耐えかねた女子部員がプールを飛び出したのを追い駆けて部室でその子を「先輩とかは君が初めての女子部員だからいまいち接し方がわからないんだよ。きっと悪気があったりするわけじゃないから、その辺はわかってあげて欲しい。今日はもう戻り難いだろうけど、明日からまた顔出してよ、待ってるから」と慰めて、次の日にいつも通り部室に行ったら女子部員が1人でいて、なんとなくヤバイ雰囲気だなぁと感じたKは奥にある更衣室代わりに使っている倉庫に目をやって、「先に着替えてきなよ」と言ったそうな。でもなかなか倉庫兼更衣室から女子部員が出てこないものだから、「なあ、まだ?俺も着替えたいんだけど」みたいなことを言い、ノックしてから扉を開けた。そこは窓も何もない暑い空間で、水着に着替えた俯き加減の女子部員がいて、入ってきたKに駆け寄って抱き付いてきて、唇を奪われた。そうして抱き合っている間に先輩が部室に入ってきて、倉庫兼更衣室のドアが開けられて、みんなにその光景を見られ先生にまでからかわれたとか童貞臭のプンプンする話を聞かされた。



僕にどうしろと……。


ま、それ以外は彼女が欲しいだの、きょぬーがいいだの、誰々と遊んだときヤル気満々だったけどヤらなかっただのと、話しているほうも聞いているほうもどうでもいい話をグダグダとしてKは帰ったわけだけれど、やっぱり僕はきょぬーよりも掌に納まるサイズが好きだし、それぐらいがかわいいと思う。きょぬーに顔を埋めるというのも悪いもんじゃないけれど。